
開発によって森林が伐採され,表土が剥ぎ取られ裸地斜面(法面)が出現するということは,人類が生きていくうえで全世界同じ問題を抱えていると言える。裸地斜面の出現は,自然破壊と呼ばれるだけでなく,日本のように降雨量の多い地域においては斜面の侵食を招き,ひいては土砂流出・斜面崩壊等,防災上問題が生じる。しかし,このような箇所においては,一般に植物の導入が困難であり,この箇所に,如何に植生を復元し,国土保全・災害防止上重要な表面侵食防止を図り,自然環境を復元するかが緑化工技術と考える。
さらに21世紀を迎えた現在,全世界的に環境問題が取り沙汰されている。その中でもCO2の排出量の削減において森林の果たす役割が注目されている。開発によって生じた裸地斜面に,単に森林を再生させるのではなく,生態系を復元させなければならない時代となった。
このような問題を解決すべく開発したのが,SF緑化システムである。SF緑化システムによる日本国内2万ヶ所2000万㎡を超える樹林化実績を紹介すると共に,緑化工の技術・世論の要望の変遷を以下に紹介する。
1. 日本における法面緑化工の変遷
日本においては1950年代以前は,人力による治山や砂防工事が,郷土性を持ちながら行われきた。しかし1950年代以降は,急速な開発と共に,大規模な裸地斜面(法面)が出現するようになり,機械播種工による植生復元技術(緑化工)が,その時々の要望に応じて開発され,今も開発が続いている。
機械播種工による植生復元方法の変遷を大まかに纏めると表-1、2のようになる。
表-1 機械播種工による年代毎による緑化工の要望と対応例の変遷
年代
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要望
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開発工法
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導入植物
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緑化時間
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対象地
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1950~
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大規模早期全面緑化 (侵食防止機能)
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種子散布工
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外来草本主体
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数ヶ月
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盛土・切土 (土砂)
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1960~
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〃 (無土壌地での施工)
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客土吹付工
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〃
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〃
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切土 (硬質土等)
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1970~
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〃 (岩盤部の緑化)
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厚層基材吹付工
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〃
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〃
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岩盤法面まで可能
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1980~
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早期樹林化 (防災と景観)
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高次団粒吹付工
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木本類
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1~3年
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〃
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1990~
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多様な樹林化 (郷土性回復)
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植生基材吹付工
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郷土種
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3年以上
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〃
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2000~
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生態系・自然回復 (環境保全)
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リサイクル工法
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周辺と同様な群落
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5年以上
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〃
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表-2 機械播種工の種類と特徴
工法名
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使用材料
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使用機械
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耐侵食性
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吹付厚
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種子散布工
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種子+木質繊維+侵食防止剤+肥料+水等
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ポンプ
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無い
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1cm以下
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客土吹付工
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種子+肥土+侵食防止剤+肥料+水等
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ポンプ・モルタルガン
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余り無い
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1~3cm程度
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厚層基材吹付工
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種子+有機基材(バーク堆肥,ピートモス等)+侵食防止剤+肥料等
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モルタルガン
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工法により異なる
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3~10cm程度
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高次団粒吹付工
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種子+粘土+有機基材++木質繊維+団粒化剤+肥料等
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ポンプ
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有る
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1~10cm程度
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植生基材吹付工
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上記の厚層基材吹付工と高次団粒吹付工等を総称
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ポンプ・モルタルガン
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工法により異なる
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1~10cm程度
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リサイクル工法
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現場発生木材・汚泥などを利用
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ポンプ・モルタルガン等
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工法により異なる
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工法により異なる
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