2.4.BF緑化工法について

 近年では、環境問題への意識の高まりと防災という観点から、ただ単に、外来草本類による早期全面緑化から、早期樹林化、そして、生態系の回復や、周辺の自然と一体化する自然回復へと、要望が高まってきた。

 これと同時に、コスト削減や、リサイクルと言った要求も強くなってきている。
 本SF緑化システムにおいても、同じことが言え、以下のような要望が寄せられた。

①自然な斜面の造成方法。
②法面条件等(勾配・土質・施工時期)に関わらず、ラス金網を使用せずに植生基盤を造成する方法の開発。
③リサイクル品による工法の開発。

以上の要望に対応するために、従来の植生工の概念にとらわれることなく開発したのがBF緑化工法である。

 

 第一に、自然な斜面を復元するためには、多様な植物群落の復元が不可欠であるが,種子配合のみでこの問題を解決するのは無理があることが判った。また、綺麗に整形された法面であることが、自然で多様な群落(生態)の復元を再生するための足かせとなっていると考え,従来のような直線的で平滑な法面整形ではなく、積極的に凹凸のある法面整形を行うことにした。最近、国土交通省でも、経費節減も含めランダム整形を提案し始めている。さらに、植生基盤を、厚い箇所や薄い箇所ができるように造成し、植物や微生物などの生物相に対して様々な生育環境を作り出すことが、自然な斜面の造成には必要不可欠であると考えた。

 

 第二には、このような法面を造成するとして、従来のSF・TG緑化工法により植生基盤安定のためにラス金網を使用すれば、周辺の自然林と同様の群落の復元は、可能であるが、環境面と経済性を考慮した場合、ラス金網を使用せずに安定した植生基盤の造成を行う必要があるのではないかと考え、その方法を検討した.。この結果、自然の森林土壌を再現した粘土と有機物による団粒構造では問題があると判断し、SF・TG緑化工法の団粒構造よりも強固な団粒構造を作り出す必要性が生じた。このためには、過去数十年来、植生工にも使用されてきたアスファルト乳剤を使って団粒構造を強化し、緑化の可能な団粒構造を有した透水性舗装を吹付施工できないかと考えた。

 

 第三には、透水性舗装をするためには、骨材となるものが必要となり、最近、各地で利用方法が模索されている現場発生木材を利用できないかと考えた。現場発生木材は、一般には、チップ化・堆肥化し、緑化基材としての利用が考えられるが、堆肥化の時間と品質保持に問題が生じている。また、生のチップを、厚層基材に利用すると、分解に伴い、窒素飢餓が生じ、植物の成立に大きな障害となることが問題視されてきた。これに対し、アスファルト乳剤を利用することにより分解は抑制され、分解速度は遅くなり窒素飢餓を起こさず、植物に悪影響を及ぼさない。

 

 以上の点を勘案した結果、生チップを骨材とし、団粒構造を有した透水性舗装を吹付により施工できる生態舗装工「バイオファルト」〈BF緑化工法〉(以下BF緑化工法と記す)を開発した。

 

2.5.BF緑化工法の概要

 BF緑化工法は、災害や開発によって出現する裸地斜面表層の安定を図るため、木材のチップを骨材とした団粒舗装により、土砂や岩盤の浸食を防止し、播種により早期樹林化する斜面の安定と緑化を両立する工法である。

 この工法の特徴は、1)現場で発生する伐採木や、間伐材をチップにして活用すること、2)高次団粒吹付技術により、木材チップ・粘土・アスファルト乳剤などの材料を団粒化させて吹付け、強固な団粒基盤を造成する。この基盤は、耐侵食性・耐水性に優れているため、ラス金網などの緑化基礎工が省略でき、多自然護岸などにも活用できる。また、様々な大きさの間隙を持つ団粒基盤は生物の生育環境としても適しており、多様な動植物のすみかとなる。つまり、斜面安定と生態回復を兼ね備えた基盤といえる。

 BF緑化工法の施工には、2槽式の汎用吹付機「ソイルシーダ2」を使用する。使用材料は、①舗装骨材「BFチップ」、②舗装乳剤「BFコート」、③植生基材「BFソイル」、④団粒化剤「BFフロック」、⑤配合種子「BFシード」および清水である。

 この工法の特徴である団粒反応を確実にして耐侵食性・耐水性に優れた基盤を造成するために、使用する材料について、規定の組み合せのバランスを崩さずに施工することが極めて重要な条件となる。

BF緑化工法の施工概要は、図-4に示すとおりである。

図-4 施工のフロー